2011年5月5日木曜日

5/4(水)たねまきジャーナル(小出さん解説)

今日も毎日放送ラジオ『たね蒔(ま)きジャーナル』での小出裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)の解説(5月4日水曜日放送分)についてです。

【今回の話題】

  1. 3月14日の3号機の爆発は、水素爆発ではなく、核爆発ではないのか?
  2. この後番組に登場する、原発推進派の大阪大学名誉教授の住田健二さんについて 【住田さんのお話をお聴きになりたい方は、こちら(その1その2)へどうぞ】

3号機の爆発の件は、このブログでも先日取り上げた問題(「1号機と3号機の爆発の違い」)で、私も小出さんのご意見を是非うかがいたいと思っていたものですから、非常にタイムリーな話題でした。番組にたくさんのリスナーから質問が寄せられたそうなので、同じようなことを考えていた方が多かったんですね。

小出さんは、3号機の爆発が「核暴走」を伴ったものであるかという問題について、次のように解説されていました。

  • 私(小出さん)は、使用済み燃料プールの中で核暴走が起きるとは、まったく思っていなかった。
  • 水素爆発だと思っているし、水素爆発が起きたことは確実だと思っている。
  • それ(水素爆発)に伴って、核暴走までが起きたかどうかということに関しては、たぶんない、とずっと思ってきた。
  • ところが、色々なデータが次第に出てきた。私が今いちばん注目しているのは、次のものだ。
  • 包括的核実験禁止条約に基づき、世界のどこかで、秘密裏に核実験が行われているかどうかを監視するための測定機関があり、日本の場合は高崎にある。そこでは、大気中の微量の放射性物質を常に監視している。
  • その施設ではずっと空気中の放射性核種の分析を行ってきたのだが、3月15~16日の測定結果では、ヨウ素135が大量にあったと報告されている。
  • ヨウ素135は、半分に減るまでの時間が6.7時間で、比較的寿命の短い放射能である。
  • もし福島第1が3月11日の地震で停止したのであれば、そのとき原子炉の中にあったヨウ素135は、3月15日の段階では、ほとんどないと言って良いものである(4日経っているので、何千分の一かになっているはずである)。
  • しかし、高崎の機関の測定結果では、ヨウ素135の量が膨大であった。その測定値が正しいとすれば、そのヨウ素135は、3月15日、あるいは14日に生み出されたものと考えるしかない。
  • そうすると、3月14日に爆発が起きたときにできたということを考慮する必要があるかもしれない。
  • 水素爆発に誘発されて、使用済み燃料プール中の使用済み燃料が、ある一定の場所に吹き飛ばされてというか、集まって、そこで再びウランの核分裂反応が異常に進んだという状況があったということが、ひとつの説明になるかもしれない。
  • そういうことも考えなければいけないのかなと、今、私は思うようになっている。
  • かなり有力な証拠なのだが、東電が何度も間違った情報を出してきたように、高崎の測定機関が間違った情報を出した可能性もあるので、注意する必要もある。
  • しかし、その測定データが正しければ、3号機の爆発というのは、ひょっとすると、核暴走ということが起きたのかもしれない、と今私は思い始めている。
  • (「このこととレベル7であることの因果関係はあるのか」という質問に対し、)それはない。核暴走の有無とはまったく関係なく、環境に出てきた放射能の量というのは、別に測定されており、大量の放射性核種が出てきてしまっていることは、確定している(それによってレベルが判定される)。
  • 日本の原子力発電所で、核暴走が起きるなんてことは、私も含め、たぶん誰も思っていなかった。それが、使用済み燃料プールの中で起きたという、ものすごく意外なことが起きたかもしれない、ということを言っている訳で、もしそうだとすると、原子力発電所の安全性をもういちど考えなおすことが必要になるだろう。
  • 核暴走というのは、瞬間的に起きて、終わるものである。
  • 核暴走が使用済み燃料プールという、むきだしの場所で起きてしまうと、短い寿命の放射性核種がたくさん環境に出てきてしまう。
  • それを高崎の研究機関が検出したと言っているのである。
  • 核暴走が起きていたとしても、今後の対応に違いはない。
  • 私自身もまだ、情報が正確なのかどうなのかというところで、迷いながら答えた。

核暴走
読み方:かくぼうそう

原子炉内の出力が異常に上昇し、臨界制御が不能な状態に陥ること。

核分裂が持続的に行われる「臨界」状態に至るには、使用される中性子の性質によって「即発臨界」と「遅発臨界」に分類される。遅発臨界は核分裂反応後やや遅れて放出される中性子(遅発中性子)を必要とするため、遅発中性子を吸収することで臨界・超臨界を制御することができる。しかし、核分裂反応の直後に放出される「即発中性子」のみで臨界に達する「即発臨界」の場合、極めて高速に超臨界が引き起こされ、外部から核分裂反応を制御することができない。

核暴走は膨大なエネルギーを瞬時に生成し、核爆発に至る可能性もある。原発事故における再臨界は核暴走の一種であり非常に危険視されている。

 出所: 新語時事用語辞典

ネット上では、核暴走(核爆発)ではないかという海外からの指摘に対し、「ありえない」として一笑に付しているようなコメントも散見されたので、小出さんはいったいどう思っていらっしゃるのかと、ずっと気になっていました。この放送を聞いて、これまでの「常識」では非常に考えにくいことではあるけれども、その可能性を考えざるを得ないデータが出てきているという状況が分かり、大変興味深かったです。

私は原子力はおろか、科学系全般にまったく疎い文系の人間ですが、今回の事故の問題を見てきて、原子力というのは、人間がまだよく分かっていない領域、完全にはコントロールできない代物という印象をもっています。

こんな訳の分からないリスクの高いものに莫大な費用を投じて、人間の健康や生命を危険にさらすというのは、本当に馬鹿げていると思います。

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