1998年からNHKで放映されていたアメリカのTVドラマ「アリー my Love」に一時期はまり、よく見ていました。その中で印象に残っているエピソードがあります(第1シーズン第16話)。主人公のアリーは、恋愛問題で悩んで精神のバランスを崩し、セラピストのカウンセリングを受けに行くんですが、そこで、自分の気分を盛り上げ、元気を出すための「テーマソング」を決めて、頭の中でその音楽をかけるように、とアドバイスを受けます。
そのセラピスト自身も自分のテーマソングをもっており、自ら熱唱してアリーに披露していました。彼女のは "Tracy" (The Cuff Links)というアップテンポの曲で楽しげな感じ。アリーがスローなバラード風の曲にしようとしたら、もっと元気のいい曲にするよう注意していました。その結果、アリーは "Tell Him" (Vonda Shepard) というノリの良い歌を自分のテーマソングに決めていました。
このテーマソングを決めるアイデアはなかなか面白いと思い、当時、私も自分用のテーマソングをあれこれ考えていました。しかし、私は元々それほど陽気な人間ではなく、どうも明るい曲があまり好きではないみたいで(苦笑)、また、気分の浮き沈みが激しかったため、ひとつのテーマソングに絞るということもできませんでした。そして、そうこうしているうちに、テーマソング選びのことは、すっかり忘れてしまいました。
ところが、去年の春、坐骨神経痛になって歩けなくなり、気分がどんよりしていた頃、ある音楽が頭の中でいつも鳴っていることに気がつきました。その曲は映画『ムーラン・ルージュ(Moulin Rouge!)』の中に出てくる「エル・タンゴ・ デ・ ロクサーヌ(El Tango de Roxanne)」という曲でした。元気が出るというより、不幸な気分をいっそう盛り上げてくれる、苦悩に満ちあふれた切ない音楽なんです(笑)。
それで、これはまずいと思い、その音楽を頭の中からかき消すため、何か他の曲を探そうと思ったのですが、暗い気持ちのときに、いきなり明るく威勢のいい曲というのは、なじめないというか、拒否反応が起きるんですよね。
それで、同じタンゴでも、もう少しアップテンポでボーカルの入っていない、アストル・ピアソラ(Astor Piazzolla)の「リベルタンゴ(Libertango)」を聴くようにし、この曲が頭の中で鳴るようになると、ロクサーヌは私の中から出ていきました。そして、だんだん元気が出始めたら、もう少し明るめの曲も受け付けるようになり、夏頃には、ユーミンの「真夏の夜の夢』が頭の中でまわっていました。
明るく元気の出る曲を選ぶように、というアリーのセラピストのアドバイスも一理あるとは思うんですが、自分の心境とあまりにもかけはなれた曲というのは、かなり無理があるような気がします。そのときの気分より「一段階あかるめ」ぐらいの曲を聴くと、効果があるように思いました。「数段階あかるめ」の曲を選んでしまうと、とても聴いていられないというか、よけいに気分が下向いて逆効果になるような気さえしました。
また、憔悴しきっているときは、完全に音楽を受け付けなくなる、ということも経験しました。どん底のときは、とても音楽を聴く気分ではありませんでした。やはり音を楽しむには、心身ともに、ある程度の力がないと駄目なのでしょう。音楽を聴く余裕があるかどうか、そして、どんな音楽を好んでいるかにより、そのときの自分の心の状態が分かりますね。
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