2011年9月1日木曜日

情動的摂食

「食べる」という行為は本来、空腹を満たすため、必要な栄養を補給するための行為だと思うのですが、現代では必ずしも、そうした目的で行われているわけではありません。

例えば、情動的摂食 (Emotional Eating) というものがあります。これは、怒り、悲しみ、不安、恐怖などの感情が引き金となって食行動に走ることです。私は昔、「ヤケ食い」と称して、ずいぶんとこの情動的摂食をやってきました。 

大量の食べ物をお腹がはちきれんばかりに詰め込むと、なんだか気が紛れるような気がしていたんですよね。あまりにもお腹が苦しくて、直後は食べたことを後悔するんですが、またしばらくたつと同じようにヤケ食いを繰り返していました。

"The 80/10/10 Diet"(Dr. Doug Graham 著)によると(以下、私訳)、

つらい感情に対処する常套手段は、高密度の消化しにくい食べ物、いわゆる「食べると元気の出る食べ物 (Comfort Food)」で、自分自身を苦しめて感覚を麻痺させることである。これは、我々の神経系の特質上、効果的である。我々の体において、そのときどきの神経エネルギーの量は有限である。食物の消化と感情の伝導は、それぞれ大量のエネルギーを必要とするため、両方を同時に行うことはできない。

と説明されています。この例として、お葬式などでは、悲しみのあまり何も食べられない人がいる一方、悲しみのあまりひたすら食べ続けてしまう人がいる、ということが挙げられていました。前者は感情が極度に高ぶって食欲が落ちている状態、後者は、体を消化作業で忙しくさせて、つらい感情から逃避している状態といえます。 

ヤケ食いで生の果物や野菜をドカ食いした、という話はあまり聞かないような気がします。大抵は、お腹にどんと溜まる(=消化しにくい)炭水化物と油脂が合体したようなものじゃないでしょうか。ピザ、ハンバーガー、ドーナツ、ケーキ、ポテトチップス、クッキーなど。これらは断じて「食べると元気の出る食べ物」ではなく、体を苦しめて、感情を感じるためのエネルギーを奪い取る食べ物です。

なので、食生活を転換して、
ベジタリアン ==> ヴィーガン ==> ローフーダー
というように、消化の負担を軽くしていくと、情動的摂食傾向がある人は、精神的な苦痛を克服しようとして、消化しにくい脂肪分の多い食べ物(ナッツ、シードなど)に引き寄せられていくようです。

そして、ナッツ、シードなどは、満腹感をなかなか感じさせてくれないので、途方もない量を食べてしまうおそれがあります。(私は以前、マカダミアナッツを食べ過ぎて消化不良を起こし、白い便を排泄、という恐ろしい経験をしました…)

私は油脂やナッツで痛い目にあって懲りているので、今ではほとんど食べませんが、加熱食には未練たらたらです。消化しやすい果物や野菜だけで満足できないのは、いまだに情動的摂食傾向があるからだろうと思っています。

食べ物で気を紛らわせる行為というのは、アルコール、タバコ、麻薬といったものに走るのと根っこは同じと思ったほうがいいでしょう。イメージ的には薬物より罪が軽いような気がしますが、体に負荷をかけて、感情を麻痺させる行為に変わりはありませんから。

この情動的摂食の解決策として、80/10/10は、

食べ物を食べることではなく、精神の安定を保ち、自分の感情を十分に感じる能力を養うことである。

と述べています。

結局は、自分の素の感情と向き合って、それに対処することでしか問題は解決できないのですよね…。


コメント

Norah様、はじめまして。
私もヴィーガンからフルータリアンを目指して脱皮中の者です。
The 80/10/10 Dietを検索し、Norahさんのblogに辿り着きました。私はまだ本書をamazonで取寄中であり、手元にありません。なのでNorahさんの記事を拝見させて頂き、予習をさせて頂いております。今回の記事も、まるで自分のことを言われているようで、本当に心がドキドキしました。私もまだまだ、過熱食への誘惑には勝てないことが多い未熟者です。高密度の食べもの、それは確かに自分を最高に誘惑し、そして快楽を与えてくれます。果物や野菜では得られない、エクスタシーの一種なのかもしれません。早くThe 80/10/10 Dietを読み解いて、知識を蓄え、知性で感情をコントロール出来るようなローフーダーになりたいです。果てしなく長い道のりですが・・・。
Norahさんも加熱食には未練があるとのこと、何だかとても安心致しました。またThe 80/10/10 Dietについて、Norahさんの感想や見解をご紹介頂けると嬉しいです。長文失礼致しました。

投稿: ぴの子 | 2011年9月 6日 (火) 15時50分

★ ぴの子さん
はじめまして。コメントありがとうございます!

80/10/10の本をお取り寄せ中なのですね。私も注文してから手元に来るまで結構時間がかかり、その間、ネットであれこれ情報を集めていたので、お気持ちよく分かります。

加熱食から生食100%にいっきにシフトするのも一つの手だと思うのですが、私の場合、そのあと反動で加熱食100%に逆戻りしそうなので、様子を見ながらぼちぼち移行中です。生食100%だと体が軽くて、気分も最高なんですが、今のところ、せいぜい3日ぐらいしか続けられず、4日目には加熱食を食べちゃってます…。

80/10/10はナチュラルハイジーンの一派なので、松田麻美子さんの本とかぶっているところもあり、そうしたところは、ここで紹介するまでもないと考えたことと、私の興味のアンテナに引っかかった部分をピックアップした結果、なんだか非常にマニアックな記事が多くなっています(笑)。これからもたぶんこんな感じだと思いますが、今後ともどうぞよろしくお願いします。

投稿: Norah | 2011年9月 6日 (火) 21時03分

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