2011年10月31日月曜日

菜食とビタミンB12(その2)

前回の記事(「菜食とビタミンB12(その1)」)で書いたとおり、植物性および動物性の食物にビタミンB12が含まれているのに、なぜ「ビタミンB12欠乏」という事態が発生するのか、"The 80/10/10 Diet"(Dr. Doug Graham 著)では、独特の観点から説明されていました。

グラハム博士は、次の4点から考察・解説を試みています。

1. 農産物にビタミンB12が含まれなくなった事情

2. 農産物を洗うという習慣

3. 摂取したB12を吸収できない訳

4. B12の標準値が人為的に高く設定されていること

原文はとても長いので、以下、簡単にまとめてみました。詳細を知りたい方は、原典に当たってください(p.246)。

1.農産物にビタミンB12が含まれなくなった事情

科学者がビタミンB12を発見したのは、1950年代で、農薬や化学肥料を使用する近代農業が1942年に始まってから既に10年が経過していた頃だった。農薬や化学肥料は、土壌を「殺菌」してしまい、ビタミンを生成するバクテリアが棲息できない環境になってしまった。

植物は自分でビタミンを作るのではなく、土の中から根っこを通してビタミンを吸い上げ、自分の中にビタミンを蓄える。近代農業の到来以前、土壌にバクテリアが多く棲む肥沃な環境で育った植物には、ビタミンB12が含有されていたはずだが、その頃、人間はビタミンB12の存在を知らなかった。

菌類やバクテリアは有機物を食べ、「糞」をする。これが、ビタミンB12などの栄養素を含む複雑な物質を土壌に豊富に与え、こうした土壌で育った植物にはこれらの栄養素が根から取り込まれて蓄えられる。有機農産物には、こうした栄養素が含まれていると考えられる。

2.農産物を洗うという習慣

昔の人は、現代人ほど潔癖に野菜や果物を洗っておらず、野菜に土が残った状態、あるいは、果物に土ぼこりが付いた状態で食べていた。そうした土やほこりには、バクテリアが棲んでおり、それを体内に取り込んでいたが、脅迫的なまでに衛生観念が発達した現代では、そうしたB12の供給ルートも断たれてしまった。

3.摂取したB12を吸収できない訳

肉食の場合、B12を生成するバクテリアが家畜の消化管内にいて、筋肉(人間が食べる部分)に分配されるため、B12を摂取することになる。また、前述のとおり、有機農産物を食べ、かつ潔癖に洗うということをしないヴィーガンもB12を摂取しているはずである。

しかし、「内因子」と呼ばれる化学物質が不足していると、ビタミンB12を摂取しても吸収できない。これがB12欠乏の原因として最も一般的なものである。菜食、肉食のいずれでも、B12欠乏のリスクがある。

高脂肪の食事の場合、次の2つの理由により、このB12欠乏のリスクが大幅に上昇する。第1に、腸内にあるB12生成バクテリアのコロニーは、炭水化物を燃料としている。食事の中で脂肪の量が多くなると、炭水化物の量が少なくなり、微生物が利用できる燃料の量も少なくなる。燃料が少ないと、コロニーの規模が小さくなり、B12の生産量が全体的に減少する。第2に、腸内でB12を取り込むところが、脂肪でふさがれて(詰まって)しまい、さらにB12の吸収が落ちることになる。

4.B12の標準値が人為的に高く設定されていること

多くの人が日常的に、ビタミンB12の合成物を含む栄養強化食品(シリアル、パン、パスタ、クッキー、ケーキなど)を食べている。この結果、基準が高いところに設定されており、こうした強化食品を食べていない人は、B12の値が「低い」と判定されることになる。

こう見てくると、B12の問題は、菜食だけの問題ではないようです。植物からB12を摂取できないと主張している方々は、慣行農法の野菜だけを見てそう断じているのでしょうか。B12の問題を引き合いに出して、菜食が「欠陥のある食事法」というような批判を見たこともありますが、80/10/10の解釈では、問題は、農薬や化学肥料、現代人の習慣、高脂肪の食事内容などであり、動物を食べないことが問題ではないとしています。

有機農産物で低脂肪のローフード生活、つまり80/10/10の食事法が徹底できれば、B12に神経質になることはないでしょう。ただ、私の場合、まだ加熱料理を食べている上、慣行栽培の農産物も食べているので、一抹の不安が残ります。それで、やっぱEMかなと思っています。「EM生活入門(3)---EM1号飲用の巻」にも書きましたが、私は1か月前にEM1号を飲みはじめてから、なんだかお腹の調子が良いのです。

80/10/10には、当然ながら、EMのことなど全く書かれていませんし、グラハム博士がどう思っているかなど想像だにできませんが、個人的には、上記の1と2のバクテリアの説明などを読んでいると、EMの助けを借りるというのは理に適っているように思われました。

EM1号は土壌改良を目的とした農業資材であり、発酵を促す有用微生物の複合体です。そして、多くの微生物は日和見(ひよりみ)的体質をもっているとのこと。日和見とは、「成り行きを見て有利なほうへつこうとする」ということだそうです。

…、勢力の強い微生物がいると、ほかの微生物はそれに「右へならえ」する。たとえば人の腸内には約100種の微生物が住みついていますが、ボス格は善玉菌のビフィズス菌、悪玉菌のウェルシュ菌など数種類にすぎず、あとの菌はそのときどきの優勢な菌のいいなりになって暮らしているのです。

『甦る未来』(比嘉照夫著)

どの微生物がB12を生産してくれるのか、よく分かりませんが、腸内環境を良くしておけば、善玉菌が天下を取り、せっせと必要なものを生産してくれたり、有機農産物に入っているB12をうまく吸収させてくれたりするのではないかと期待しています。

 また、菜食を実践して体調が悪化する原因は、B12だけではありません。私は過去の経験から、B12の心配より、油を使った炒め物や揚げ物(火食ヴィーガンの場合)、ナッツやオイル(生食ヴィーガンの場合)、砂糖やメープルシロップ、アガベシロップなどの甘味料をどのぐらい摂っているか、そして、お腹がすいていないのに必要以上に食べていないか(大食)について、まずチェックしたほうがよいと考えています。(このあたりのことは、去年(2010年)の8月末~9月頃の記事に書いているので、ご興味がおありの方は過去記事をご覧ください。)

【2012.3.23 追記】

ローフード生活が軌道に乗ってきたので、EMの飲用はとりあえず中止することにしました。

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